2519399 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

アメリカ・ロサンゼルス幼稚園情報 [すいか幼稚園]

アメリカ・ロサンゼルス幼稚園情報 [すいか幼稚園]

イルカセラピー 最終レポート 後編

そして2日目、Vは私たちスタッフの顔を覚えていたようで、朝、声を掛けると笑顔を見せていました。私たちは全員、感動です!そしてこの日、Vにとって大きな一歩となりました。ボート、海水、そしてイルカ…彼女にとっては全てが初めての経験だったのですが、Vは嫌がって泣くこともなく、ボートから見える水しぶきを見てうれしそうに「Agua!」と叫んだり、インターン生に連れられて海に入っていました。

この日は幸運にもたくさんのイルカに遭遇することができたので、私たちもVがイルカを間近で見れたと確信できました。

そして午後からはV のためのBody Work。マッサージや水中指圧に加えて、粘土を使った制作をしました。特に感動したのは、Vがマッサージのあとから右の手の平を開きはじめたこと、そして制作の時には、その右手を使って粘土を掴んでいたことです。

そのことを褒めたときに見せたVの自慢げな顔は忘れられません。

3日目、Vはもうすっかりスタッフに慣れています。

そしてVの母親もなんだかうれしそうです。

訳を聞いてみると、Vが今日したいこととして「イルカ」の写真を指差したそうです。それを聞いて私たちはまた感動です。

この日は波が高く、Vも彼女の母親も船酔いをして少し疲れた様子でした。

しかし午後からのExpressive Artの時には元気になり、興味を持って取り組んでいたように思います。

Artの例として、Fish Printと呼ばれる本物の魚を使ってのTシャツ制作や、海岸で拾ってきた貝殻や砂を使っての「宝箱」制作、また、Sensory Therapyとして、不思議な感触のおもちゃ遊びを通しての指先の運動があります。

一方、プログラムの一部であるMusic Therapyでは、皆でドラムを叩いたり、寝転がって大声で笑ったり、瞑想にふけったりします。Vも床に腹ばいになって一緒に笑っていました。このMusic Therapyは子どもももちろん楽しめますが、どちらかというと保護者向けのセラピーであったように思います。

また、Watsuと呼ばれる水中指圧は保護者も受けられることを考慮すると、障害を持つ親への心身ケアにも配慮されていることに気づきました。

プログラム最後の日、一週間のSerenity Programを通してのVの成長を皆で話し合いました。まず、Vが他人と信頼関係が築けるようになったこと。

Vは最初、母親から離されると泣いていましたが、2日目以降は母親と離れた場所で泳いでも何の問題もありませんでした。

そして彼女の右手の発達。最初はほとんど閉じていた右手も、だんだんと開く回数が増えました。そして物を掴む時、以前はほとんど小指を使えなかったのに、最終日には自分で5本指を使って掴むようになりました。

さらに彼女の認識力の発達。最初はイルカのイメージもなく、「どこにいるんだろうね?」と聞いても目を泳がせていましたが、最終日には何と、指でちゃんと海水を指差しながら「Abajo(下)」と言ったり「Agua(水)」と答えてくれました。「イルカは水の中にいるんだね」とスペイン語で聞くと、うれしそうに笑ってうなずいていました。また、簡単な選択肢にも答えるようになりました。イルカと泳ぎ終わって「どこに行く?ママの所、それとももっと泳ぐ?」と聞くと返答し、「じゃあ泳ごう!」と言うと、水中で足を動かしていました。

そして何よりも私が忘れられないのは、イルカが予想外にも突然、Vの間近に現れた時のことです。Vは少し驚いた表情をしながら、「驚いた、でもうれしい」という感情を、彼女の真横でサポートしていたスタッフの私と共感するように笑ったこと。ある瞬間を共感できるということは、成長過程にとって大きな意味を持つことだと思います。その瞬間に立ち会えたこと、その瞬間に見た彼女の笑顔は一生忘れられません。

<終わり>


© Rakuten Group, Inc.